じっとしてられず落ち着きがない多動性行動。
後先考えず行動し問題を起こしてしまう衝動性。
子供も大人も、このような症状は発達障害の可能性があります。
病院でADHDと診断されると適切な治療で問題行動が改善されていきます。
目次
発達障害とは?
発達障害の主な分類
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 注意欠陥障害(ADD)
- 広汎性発達障害(PDD)
- 学習障害(LD)
- 知的障害
発達障害は、この他、さまざまな症状や種類があります。
いくつかの障害を合併していることもあります。
広汎性発達障害(PDD)
比較的、男の子に多く、幼児期の5歳までに障害が明らかになる子が多いです。
成熟の遅れや脳の機能障害が原因と考えられています。
- 自閉症
- 小児自閉症
- 高機能自閉症(知的レベルが高い)
- 社会性、対人関係の障害(協調性の欠如、人との感情的な交流が苦手)
- コミュニケーションの障害(言語理解や聴覚の反応に異常がある)
- 常同行動(同じことをずっと繰り返す、好きなことに異常な関心を示す)
- 知的能力(知的能力が普通、劣る、優秀なものまで幅広い)
- アスペルガー症候群
団体行動が苦手で、常識的なルールを理解できない。
高機能自閉症の中で言葉の遅れがないもの。
発達水準が高い自閉症。
子供の頃には気づかれず、成長した思春期などにわかることもある。
学習障害(LD)
知的な発達に遅れはないけれど、特定の能力の習得に困難を示す。
「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」
など、どれか1つだけに当てはまる場合も、学習障害の可能性がある。
高校や大学受験の勉強を頑張りたいのに、どうしても覚えられないことで学生時代の成績や進路に影響が出てしまう。
成人してから大人のADHDと診断され、昔から学習障害だったことが原因で勉強に影響してたのでは?と気づく。
知的障害
「理解力」「思考力」「記憶力」「判断力」「知覚力」
の認知能力が全般的に遅れている状態。
知能検査の知能指数が70以下の場合、知的障害と判断される。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
主な3つの症状
- 不注意
- 多動性
- 衝動性
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴
- 悪気はないのに、不注意による失敗や、衝動的な行動によって、トラブルを起こしてしまう。
- だから、家族、学校、職場では「無責任」「だらしがない」と、悪く誤解される。
- 皆が、思いつかないような「ヒラメキ」「アイデア」で、周りをびっくりさせたり「創造的」「直観力」など、良い面もある。
- 「覚醒機能」の障害が原因で注意散漫。
- 「認知機能」に障害があるため、混乱してしまいパニックになる。
- 予定、約束、仕事など「先延ばし傾向」がある。
- 興味や関心があるか無いによって、集中力とやる気が極端に変わる。
- 普通の子供に見えるのに「普通のことができない」ので体罰を受けやすい。
- 怒ってても怒りが長続きしない。
- 気が短くて欲求不満に耐えられず、ストレスに弱い。
- 気分がコロコロ変わる。
不注意
- 財布や携帯電話、重要な書類など、大事な物を紛失する。
- いじめられやすく、引きこもったり、不登校になる。
- 整理整頓ができない。
- 何かを集中し続けることができない。
- 細かいことに気がいかないため、作業がいい加減。
- 毎日することを忘れてしまう。
多動性
- 喋りすぎる。
- 授業中に席を離れてしまったり、座っていなければならないのに座っていられない。
- じっとしていることができず、落ち着きが無い人に見られてしまう。
衝動性
- 人が話してる最中に喋って、相手の話を最後まで聞かない。
- 刺激を求めてわざと危険な行動をする。
- 誰かをいじめたり、非行、暴力など、反社会的なことをする。
- 積極的で感情のまま衝動的に行動する。
- 順番を待てない。
- 多動とは違って、衝動は生涯にわたって持続する。
- 思いついたことをぱっと口に出したり行動に起こす。
ADHDの原因は?
脳機能の発達や成熟に偏りが生じ、脳の微細な構造的異常などの生物的要因と環境的要因の両方が関与している可能性から症状が出てしまうと考えられています。
ADHDは子供だけの症状じゃないの?
- 以前は、コンサータを処方できるのは、6歳以上13歳未満に限定されており、13歳以上にはコンサータの有効性、安全性が確立していませんでした。
- 13歳以上の大人のADHDにはアトモキセチンが治療薬として2007年から開始しました。
- ADHDは、小学校低学年くらいに症状が強く出ます。
- いたずらや落ち着きのなさが目立ちます。
- 大人になってくと症状がおさまってくるケースが多いです。
- 数年前から大人にもコンサータが処方されるようになったこともあり、大人のADHDや老人性ADHDなど聞くようになりました。
- 子供の頃からの症状が残るケースと、大人になってから初めてADHDだと診断されたり、気づくケースがあります。
- 精神科医も以前は大人のADHDの知識があまりなく、現在ADHDだと診断している患者に「双極性障害」「気分障害」「境界線人格障害」「躁鬱病」などの病名で、抗鬱薬や抗不安薬などの薬を処方していました。
- 発達障害であるのに、抗鬱薬を飲むことで、眠くなっていまい無気力で寝てばっかりで意欲がわかない、という人もいたのです。
- ADHDは脳の覚醒レベルが低く、睡眠効率の悪さがある場合が多いので、抗鬱薬や眠剤は余計症状を悪化してしまうだけだったように思います。
- そのような薬を処方されてきて、成人後、大人のADHDだと診断された人達の中には、中枢神経を刺激するコンサータやストラテラを服用するようになって、劇的な変化を実感している人も多いのです。
- 原因である脳の機能を改善することで、悩み続けてきた症状が改善されることは、どれほど嬉しいことだったでしょうか。
- 本人も、家族も人生が変わったような思いだったはずです。
発達障害の診察をしてくれる病院は?
- 一般的には、精神科です。
- 精神科でも、発達障害を専門に診てくれる医師がいて、発達障害を専門に扱っている病院を探して受診することをオススメします。
- 小児神経科、心療内科の看板をあげている病院にも発達障害を専門で診てくれる医師がいるところもあります。
- 最寄りの地域の精神保健医療センターや保健センターに電話で問い合わせるだけでも専門の病院を教えてくれます。
- 精神科にかかる際は予約を事前にとる必要があります。
- すぐに行きたくても初診の場合はすぐに予約をとって診察してもらえるわけではありません。
ADHDの診断
- 初診の際は、小中学校の時の通知表や連絡帳を持参し、本人をよく知る親や家族など一緒に同行して症状を話してもらうのが良いです。
- 一度だけの診察では診断がつかないこともあります。
- 何度か診察を受けなければならない場合もあります。
- 診断は、問診や医学的・身体学的検査、知能検査など行います。
- 知能検査は、精神科医以外の専門の資格を持った方が病院に来て、数時間かけて、医師の診察とは別に予約を取り、数回のテストを受け、2、3ヶ月後に結果がわかるような精密にわかる検査などあります。
- ADHD特有の症状が載っているチェックリストを使って現在の症状を調べていきます。
- 幼少期から成人してからの状況など細かく聞かれるので正直に答えていきます。
- 生い立ち、両親、家族についても聞かれます。
- ADHDの症状を数値化するために、本人や親、家族などが答えていきます。
- 身体疾患や脳器質性疾患がないか調べます。
- 脳波検査、血液検査、頭部MRI/CTなど行う場合もあります。(精神科に設備がない場合は脳神経外科などで画像診断を受けることもあります)
- 依存障害や他の精神障害などが隠れていないか問診します。
精神科にあるJanssen大人のAD/HDパンフレット
ADHDの治療方法
ADHDの治療の基本は「薬物療法」と「心理社会的治療」になります。
発達障害の相談機関
発達障害者支援センター(全国にあります)
障害者就業・生活支援センター
精神保健医療センター
保健所(保健センター)
市区町村の役所(福祉課)
精神科、神経科、小児神経科、心療内科
ADHDの治療に処方される薬
ADHDの薬物療法によって症状が改善される治療薬
- メチルフェニデート塩酸塩(コンサータ)
- アトモキセチン(ストラテラ)
脳内に、ノルアドレナリンとドパミン(神経伝達物質)を増やし、中枢神経を刺激することで不注意などの症状を抑えることができます。
その他の治療薬
- 抗鬱薬
- 抗てんかん薬
- 抗精神病薬
SSRIフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)選択的セロトニン再取り込み阻害薬とコンサータを併用することで、多動、衝動の症状に効果があります。
ADHD治療薬コンサータ特徴
- コンサータは食欲がなくなる副作用があるため、成長期の子供が服用する際は注意が必要です。
- コンサータを服用して12時間は「眠れなくなる」という人が多いです。
- コンサータは服用してから、体内で少しずつ成分がでてくる構造で、効果は12時間続きます。
- コンサータは1日一回服用のため、服用した時間から12時間経過すると効果が切れてしまいます。
- 仕事や学校での大事な時間に効いてもらいたいので、服用する時間を調節して、就寝時に効いていることがないよう、服用する時間を調整してください。
- コンサータが切れると眠気がひどい人や、コンサータだと生活リズムに合わせられない人もいます。
ADHD治療薬ストラテラ特徴
- ストラテラは効果を得られるまでに数週間飲み続ける必要があります。
- 人によって、頭痛や吐き気などの副作用がでる場合もあります。
- 最初は、ドンペリドン錠(吐き気止め)など、一緒に処方してくれるはずです。
- 副作用がでても吐き気止めを服用し、我慢できるくらいなら、続けて服用してみてください。
- コンサータは効果が12時間しか続かないのですが、ストラテラは、効果のある時間が限られていません。
まとめ
不注意、多動性、衝動性などのミスが多いと
「自分はADHDかもしれない」
「あの人はADHDなのでは?」
と、わかるように、ADHDが最近では、広く認知されるようになりました。
やっと、日本でも治療に繋がりやすい社会になったと思います。
モデルの栗原類さんは、自分がADD(注意欠陥障害)であることを公表しています。
ハリウッド俳優のトム・クルーズさんは、字が読めない失読症(ディスレクア)であることを公表していますが、役者は台本を読んで台詞を覚える仕事なので、相当の努力と苦労があったはずです。
芸能界には、他にも「自分がADHDであること」を、公表している芸能人が大勢います。
良い意味で、発達障害がメディアで知られるようになりました。
注意欠陥多動性障害が大勢の人に知られていなかった頃は、子供を叱りつける、逆効果な対応で、悪循環を繰り返していたはずです。
つい、怒鳴ってしまう親も、精神的に疲れ果てます。
子供同士では、いじめられる原因にもなります。
悪気がない子供にとって辛いことです。
だから、ADHDの症状が知られるようになったおかげで、多くの人が救われたと思います。
原因がわかれば「どうして?」「なんで?」と、相手を責めなくなります。
それだけでも随分、楽になります。
だけど、精神的な障害となると「本人も家族も認めたくない」と、思う人も少なくありません。
「精神科なんて恥ずかしい」
「自分は障害なんかじゃない!健常者なんだ」
「周りに気づかれることが嫌」
このような偏見がある為に、治療に繋がれない人もいるのです。
日本では、まだまだ、精神科の敷居が高く、抵抗を感じている人が多いです。
勇気を出して症状と向き合うことで、本人と家族の悩みが軽減されていくはずです。
- 自己中心的で
- 周りに迷惑ばかりかける
- だから嫌われてしまう
- いじめられる
- 不登校になる
- 仕事に行きたくない
「わざと、やっている」と勘違いされたまま、過ごしていくことは、本人も孤立してしまい、社会で適応できなくなる可能性も大きいです。
そんな状態のままでは、本人も家族もストレスに悩み続けていくことになります。
発達障害を専門的に診てくれる心療内科や精神科に行ってみるだけで、日常生活に支障がある原因を知ることができ、どのような治療法があるのか教えてくれるので、まずは相談だけでもしてみてください。
専門医に、話してみる、それだけで心がスッキリするものです。